薔薇(ばら)【Rose】
色によって花言葉は様々ですが、ばら全体でいうと、美、愛情(英)、無邪気、さわやか(仏)…という、なんとも王道な花です。英国では女王陛下をこの花に喩えたりする歴史から、転じて“崇高なもの”という意味にも使われたりするようです。そういえば昨年、日本女性の心わしづかみにしていったベッカム様したがえるサッカー・イングランドナショナルチームのユニフォームの胸元にもこの花がありました。写真は、そんな大ばら帝国はロンドン郊外にあります『キュー・ガーデン』という植物園で筆者が3年前に撮ってきたものです。英国でばらが満開になるのは6月。そんなわけで6月に結婚した花嫁は幸せになれる…ジューン・ブライドの由来もそこです。ストーン・ローゼズ、ガンズ・アンド・ローゼスなど、バンド名自体にばらが入っているものもありますが、“ローズ”ではなく“ローゼズ”になった場合、スラングで“壮美なもの、悦楽”とかいうことを指すとか。歌詞への登場はかなり多くの楽曲で見受けられますが、私の個人的なランキングではマニック・ストリート・プリチャーズの『ローゼズ・イン・ザ・ホスピタル』が今のとこ第1位です。ホスピタルは同じくスラングで“刑務所”をも指しますので、ローゼズ(女王陛下)は病院(のような宮殿刑務所)にいる、ローゼズ(街の崇高なもの、壮美な悦楽)も病院(刑務所)にいる…深読みすれば、こんなとんでもない歌詞にも受け取れます。マニックス万歳!
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ばらの花
作詞/作曲:岸田繁 編曲:くるり
(ビクターエンタテインメント)

雨降りの朝で今日も会えないや
何となく でも少しほっとして
飲み干したジンジャーエール 気が抜けて
安心な僕らは旅に出ようぜ
思い切り泣いたり笑ったりしようぜ

愛のばら掲げて遠回りしてまた転んで
相づち打つよ君の弱さを探す為に
安心な僕らは旅に出ようぜ
思い切り泣いたり笑ったりしようぜ
僕らお互い弱虫すぎて
踏み込めないまま朝を迎える

暗がりを走る 君が見てるから
でもいない君も僕も

最終バス乗り過ごしてもう君に会えない
あんなに近づいたのに遠くなってゆく
だけどこんなに胸が痛むのは
何の花に例えられましょう

ジンジャーエール買って飲んだ
こんな味だったっけな
ジンジャーエール買って飲んだ
こんな味だったっけな

安心な僕らは旅に出ようぜ
思い切り泣いたり笑ったりしようぜ

 古今東西、人は音楽の中に植物をたずさえてまいりました。2003年、今、私たちは手塚治虫先生がロボットさえ人間のように心を悩ますだろうと想像した過去の未来にあります。が、しかしてどうして深夜に突如アイスが食べたくなってコンビニに行くと、その途中の駐車場には、ものすごく強引なかたちでわけのわからぬ雑草が「俺!俺!」と生い茂っていたりします。つまり、まだまだ植物たちはつねに私たちの隣人なのです。
 そんなわけで駐車場の雑草よろしく、ちょっとだけ意識すれば音楽の中にもたくさんの植物が生えていることに気付きます。うっかりすると見逃しがちですが、そこで植物はなんて言ってるのか。私どもになんて言ってきてるのか。……アホか! な〜〜に、くそロマンチックなことほざいてますか! だいたいにして、音楽の中の言葉を考えるなんて野暮なんだよ! そんな思いにもかられるわけですが、そこは野暮を承知でいかせていただきます! ママ、一番強いカクテル持ってきて! 酔わなきゃやってらんねえ! 午前中だけど!
 というわけでみなさん、酔いの強い曲、くるりの『ばらの花』はご存知でしょうか。いや、酔いが強いというのは私の勝手なる裁断なんですけども。
 “くるり”といえば日本人の大半の方が、東北弁で言うと“せづね〜〜〜〜”という形容詞でその楽曲と歌詞を表現する“切ない界”王様バンドですよね。そんなバンドの歌詞に“ばら”とは、これいかに。
 ばらと言えば、花の女王。花姿、芳香、歴史…どれをとっても堂々たる王道ぶり。ガーデニングの祖国・大英帝国の国花であり、ベルサイユ宮殿では“薔薇は、薔薇は〜〜♪”とオスカルやマリー・アントワネットの“散りぶり”に喩えられたりするような、姉妹でいえば恭子さんや美香さんのような花であります。そんな王道&ゴージャスな花が、なぜあんな繊細なバンドの曲に採用なんですか?
 さて、この曲に出てくる“僕”と“君”を見ていきましょう。雨降りの朝に“君”に会えない僕はなんとなく、でもホッとする。“君”の弱さを探すために“僕”は相槌を打つ。そして、踏み込めないまま朝もむかえる。朝、つったら、想像するのは…すいません下品なこと言いますけど、そら、愛しあった夜の後なわけですけども。この“僕”と“君”がそういうことをしたのかどうかは分かりませんが、しててもしてなくても、“僕”と“君”の距離は変ってない。…ように見える。
 人によって、恋愛の据え方は様々です。人の数ほど、恋愛の据え方があるような気もします。で、ある種の人間にとって、恋愛は非常に怖いものであったりします。バカのひとつ覚えのように軽々しく「好きだ」「惚れた」などと口にして、所詮は子孫繁栄のための動物的なバカ騒ぎではないか。どんなに繊細なふりしたって、結局はやるやらない。そう考えると、“僕”はくらがりの中で“君”が見てるから走るけども、やっぱ“僕”も“君”もいなくなる。ジンジャーエールを買って飲んでみたら、なんかこんな味だったか?とへんな気分になる。
 『ばらの花』に出てくる“僕”は、自分の中にあるそういうちぐはぐな味に困惑しているように見えます。でも、“君”を思うときに痛む胸を喩えるなら“ばらの花”であり、遠まわりしてまた転んだときに掲げるのも“ばらの花”なのです。“君”が好きな気持ちはやっぱどーしても王道で、よくよく考えたら普通の感じ。だから“僕”は、思いっきり泣いたり笑ったりしようぜ、と王道なことも素直に口にし出します。…いいじゃないすか! この際、徹底的にダサく、壊滅的にサムい感じでいい! つーか、そこにいかないことの方がダサくてサムいわ! この、ビビリ根性なし!…でも、ジンジャーエールってこんな味だったけな?
 くるり及び岸田ファンの皆様ごめんなさい。一介の植物好きがあの曲を聴くと、こんな妄想がやってくるわけです。岸田さんの真意は別のとこにあるあもしれませんが、音楽はどんな聴き方してもいいっすよね?
 岸田繁・作詞作曲『ばらの花』。“ばら”という花の王道と恋愛の王道を、どう考えても王道じゃない“僕”が、ちぐはくな感覚を覚えながらも勇気を持って同居させる。やはりここでは“ばら”じゃないとダメなのです。
 …ママ、今日のカクテルはほんと強かった。そろそろカラオケやってもいいかな? 今日なら完璧なバカ面で歌い踊れそう。……じゃ、聴いてください、トシちゃんで『きみに薔薇薔薇…という感じ』!! マイクはシルバーじゃなくて、ゴールドの方でよろしく!


vol.1
薔薇03.6.17on store「LAUGH-OUT!」