アーティチョーク【Artichoke】
キク科。和名:朝鮮あざみ。地中海が原産で2〜3メートルになるものも。開花直前の蕾を塩、オリーブオイル、ニンニク、赤トウガラシ、白ワインなどを一緒に入れて40〜50分ゆでると食用に。レモンを絞ったり、ドレッシングをつけたりしていただきます。ナイフやフォークをつかわずに直接手で食べることが許されているワイルドな植物。

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『ARTICHOKE』
CIBO MATTO('96/Warner Bros.Records)
作詞:本田ゆか
作曲:本田ゆか
対訳:Matthew fargo

Al. '96『 VIVA! La Woman』no.10

My heart is like an artichoke(あたしの心はアーティチョークの如きなり)
I eat petals myself one by one(花びらを一枚ずつ、自分で食べつつ)
Until I feel enough(満腹を感じるまで)
Until I lose to laugh(笑顔を喪うまで)
When I end to eat the last one(最後の一枚を食い終えると)
I will tear my drops(落とした花びらを涙に変える)
I will lose my lips(唇を喪う)
Though I can't stop plucking off(抜くのを止められず)
I can't see my core(しかし自分の芯を見えず)
I keep asking for you more and more(次第にあなたを求める)
Can you peel my petals one by one?(あたしの花びらを一枚ずつ剥がしてくれるの?
Your hands are like a rusty knife(錆びた包丁のようなあなたの手で)
Are you gonna keep on peeling me?(あたしを剥がし続けるの?)
Are you gonna keep on peeling me?(あたしを剥がし続けるの?)
Are you gonna keep on peeling me?(あたしを剥がし続けるの?)
What am I gonna be on the pan?(あたし、いつになったらフライパンに入れられるの?)
Will I be burnt black?(真っ黒に焦がされるの?)
Can you squeeze a lemon on me?(あたしの上にレモンをしぼってくれるの? あたしの上にレモンを頂戴)
Baby . . . Baby . . .(ベイビー、ベイビー)
Everything You wanna feel(あなたの感じたがっている全て)
Baby . . . Baby . . .(ベイビー、ベイビー)
Everything You wanna taste(あなたの味わいたがっている全て)
Baby . . . Baby . . .(ベイビー、ベイビー)
Everything You wanna feel(あなたの感じたがっている全て)
Baby . . . Baby . . .(ベイビー、ベイビー)
Everything You wanna taste(あなたの味わいたがっている全て)

(株式会社バッドニュース音楽出版)

 蟹があまりにおいしい季節であります。こたつでいただく甘栗も格別ですね。嗚呼、なぜおいしい食べ物は食べるのが面倒臭いのか。蟹や栗を食べながらやってくるこの感慨は、アーティチョークを食べるときにもやってきます。モクモクして苦うまいこのアーティチョークという植物は、気候がむかないこともあってあまり日本では馴染みがありませんね。私も初めて食べたのは外国でした。花びら状になったトゲのような部分を外側から1枚づつはがし、根元のとこを歯でガリガリしごいて食べていくのですけど、食事としての作業量は蟹とか栗にソックリです。手作業の食べ物です。やもすると作業がメインみたくなります。で、1枚1枚はがして食べてくとやがて芯の部分にいきあたるのですが、それが一番うまい部分とされおり、アーティチョークハートなどと呼ばれているようです。たしかになんかモックリとうまいわけですが、それが食べたいから手作業を受け入れていたかというとそうでもない。花びらっぽいとこを食べてるときもおいしいのです。蟹の目的が蟹味噌だけでないように、アーティチョークもアーティチョークハートだけが目的ではない。
 さてせっかくですから一気に飛躍しましょう。あなたの人生の目的とは一体なんですか? あなたは何のために生きているのですか?
 アーティチョークを食べるといつも思います。嗚呼、うまい。しかし、面倒くさいなぁ。なんて面倒くさい食べ物のなんだ。面倒くさいけど、うまいからいいや。面倒くさいに目をつぶれさえすればうまいがやってくるじゃないか。私よ、花びらをむけ。面倒くさいけど花びらをむけ。そしてそれをドレッシングにつけて歯でしごけ。むけ、そしてむけ………。そして思います。これは、なんだか生きることにソックリではないか、と。面倒くさいけど、花びらをむくのをやめたらうまいはやってこない。アーティチョークハートにたどりつきたいのはもちろんあるけれど、今のこのむきむき作業だって充分に価値あることなんじゃないのか。本当はアーティチョークハートなどなくてもよいのかもしれない。むき続けることができるのならば、それが目的になる。生きるとはすなわちアーティチョークの花びらをむき続けることなのだ、と。
 そんなアーティチョークを題材にしている楽曲がチボ・マット初期のアルバムに入っています。歌詞をザッと見ると、なんとなく恋愛のことを言ってるっぽいのですが、これはそのまま恋愛なのかもしれないし、もしかしたら、生きることについてなのかもしれないなあ、と思うことがあります。YOU(あなた)という二人称を、恋愛対象に据えれば恋愛ソングなのですが、これを神とか宇宙とか自然とか、人間を超えた大いなる存在と据えると、なんだかものすごく思うところあります。思うところありまくりで貧血です。
 我々人間は<Until I feel enough(満腹を感じるまで)><I eat petals myself one by one(花びらを一枚ずつ、自分で食べつつ)><Though I can't stop plucking off(抜くのを止められず)><I can't see my core(しかし自分の芯を見えず)><
I keep asking for you more and more(次第にあなたを求める)>。死ぬまで花びらをむかないといけないかと思うと、これまた貧血おきそうですが、むくのを楽しめたり味わえたりすれば問題なさそう。最後にあるアーティチョークハートはどんな人も一緒な気もするし、極論すれば別になくてもいいような…。楽しく花びらがむければそれでいいような…。
 ある小説家は神を玉葱にたとえました。玉葱の食べ方を知らない人は、それが食べる部分だと知らずにむきつづける。食べる部分を1枚1枚むいては捨て、結局何も食べられない。そしてそのように神とは実態のないものでもある。この小説家のいう神は、別に神じゃなくてもいいと思いました。人生でも恋愛でも仕事でも、なんでもいい。アーティチョークも全く同じですね。芯にあるものは関係あるけど関係ない。食べるのはそこだけじゃない。ようは、私たちが食べる部分をどれだけ見逃さずにいられるか……じゃなくて?
 春はなんだかまだまだ遠く、いろんな意味での面倒くさいがつのる時期ですが、花びらをむくのをやめず、食べる部分を見つけては味わってまいりましょう。そうです、そこが食べる部分! 捨ててないですか?


vol.8
朝鮮あざみ04.2.17発売「BARFOUT!」掲載