奈良の朝廷が墾田永年私財法(743年)を制定して今年で早1260年。私がこの“墾田永年私財法”という7文字の漢字を覚えてからでさえ早いものでほぼ20年という月日が流れようとしています。今ではこれがどんな法律なのかさっぱり思い出せません。きっとこれを読んでいるみなさんもそんなことはすっかり忘れて、suicaにチャージしたり、名刺の増刷を発注するメールを書いたり、食器用洗剤が切れてるのに毎日毎日買い忘れていつも洗う段になって思い出しガックリ…というような日常を送っておられるのでしょうね。かくいう私もみなさんと同じ。今月の“言いたいだけ言葉”も墾田永年私財法とはまったく関係ない日常から開墾されました。
それは友人とデパ地下のお弁当コーナーをそぞろ歩いていたときのことです。私の目の前になんだかとても懐かしい気持ちにさせるカニクリームコロッケ弁当が、さも旨そうに陳列されていました。サクサクした衣からトロ〜リと蟹の凝縮が溢れるあの口中天国を想像し、私はその場で一人“あの世”にトランス…。すると友人はやさしく話し掛けました。
「いいよ、おごってあげるよ、何クリームコロッケ弁当がいいの?」
はっ! 私は瞬時にあの世から帰ってきました。何クリームコロッケ? だって、ここにはカニクリームコロッケしかないけど…? 何って? え? そして、臍に強い刺激が…! 何、って聞かれておきながら、限定されている! 委ねられているようで、決められている! 自由なようでいて、自由じゃない! 「何釜飯にする? 何フライがいい?」など言うとこの“何”ではありません。目の前にカニクリームコロッケしかないのに何クリームコロッケ、と聞いてるのです。
ピーンときました。これは今私が一番望んでいたことかもしれない。聞かれたいけど決まっててほしい。偽りでいいから幅が見たい…。それ以来友人の間では、この“何問答”というが一大ブームとなりました。
「ご飯かあ…何ドナルドでもいいよ」
「レンタカーの車種って言われても、こっちは何レディZでも問題ないからさ」
「私ね、プレミアはひいきってなくて、何チェスターユナイテッドでもいいの」
「横浜にあるのってインターコンチ何タルだっけ?」
「ダイエット? んもう、何タクになりたいわけぇ?(笑)」
「どっちの電車でいく? 俺は何ガシラ線でも構わない。きみが決めてよ」
もう、きりがありません。これを始めると地図が読めない女である上に仕事の手を止める女、そして〆きりが守れない女になり、かつ、忘れたふりして頭の中では次の“何”を探してる女に成り下がってしまいます。これじゃあ、話を聞かない男の方がよっぽどましですね。もちろんあの本は読んでないんですけど。
ともあれ“墾田永年私財法”という漢字群がrelax誌上で4回も連呼されたことはないでしょうから、今月はそれだけで地図を読むより実りがあったかもしれません。そしてみなさんも、そこでそうやってボンヤリとsuicaにチャージするだけじゃなく“何問答”を実際に声に出してみてはいかがでしょうか。恋人と、友人と、家族と。自由なようなでいて縛られたこの快感。甘噛みに似た愛撫。安全ないじめ。
「いじめ、カッコわるい」(これ何ゾノがゆってた?)
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vol.3
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モナリザ描いたのは何ナルド・ダ・ビンチだっけ?(03.4.6発売5月号)
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