突然ですが思い出してみてください。子供の頃、急にガリガリ君が食べたくなったとき、あなたはどうやってそれを解決しましたか? そうです、あいつに買いに行かせたはずです。人間は10代になってやっとエラで呼吸を始めますが、0代ともなるとたしか足を切ってもすぐにまた生えてくるんじゃなかったでしょうか。私もそんな感じでしたので、あいつのことは“人っぽい顔をしたリモコン”だと思っていました。
私がまだプラナリアだった…つまり0代、小学生だった冬休みのある日“言いたいだけ”の神様は降りて参りました。その日は前日の夜から雪が降って、朝起きたら一面銀世界でした。私はすぐさまリモコンを叩き起こし、自宅の庭にある物置きの屋上に“特設・子供スケートリンク”を作る提案をしました。屋上に水を張って氷らせテカテカにする。そして靴で滑って遊ぼうじゃないか。リモコンは眠い目をこすりながらも「さすが、姉ちゃん! 抜群の企画力!」という表情でキン肉マンパジャマを脱ぎすて戦闘服に着替えました。
リモコンの目は輝いていました。リモコンはせっせと除雪をし、水を張るためのホースがあと一歩で屋上に届かなくてもくじけず、わたしが歌舞伎揚げを食べながら心霊写真を見ている間に、一人バケツリレーで屋上に水を張ったのです。心霊写真に釘付けになっていた私をリモコンが呼びに来た時、屋上にはすばらしい塩梅に水が張られていました。
もうあとは、水が氷ってくれるのを待つばかり。そして私たちは私しか勝たないオセロをしながら、15分おきにリモコンを氷の見張りに出しました。しかし、待てど暮らせど、屋上の水は一向にテカテカにならない。リモコンがハリキリすぎて水を多めに張りすぎたことが原因のようでした。私はヤケを起こしました。
「アホ!バカ! お前のせいだ! 加茂神社にお参りして神様に“もっと寒くなってください”って言ってこい!」
…そのときです。リモコンは堰を切ったように
「tfhssふぁsぢうhoiAsづひおOIU$!!!」と、
動物の鳴き声にも似た声を上げながら号泣し、次の瞬間、私めが
けあらん限りの力でミカンを投げつけたのです。ミカンは私の右目に的中し、ものすごい痛みが走りました。私の目からも涙が溢れました。コタツで向き合った姉弟は、肩をものすごく上下させながら号泣です。ミカンを投げてきたリモコンに対する怒り。ミカンを投げられたことへの屈辱。そして何より、あのリモコンが私に反撃してきたことへの驚き。複雑な感情が入り交じりすぎた私はとんでもないことを口にしてしまいました。
「ミカンを投げたら、痛いんだぞ…」
号泣していたリモコンはパタリを泣くのをやめました。3秒程表情がなくなり、次に“死ぬ〜〜!”と体をクネらせながら床をのたうち始めました。その言葉によって、リモコンの上に“笑いの神”が降りてしまったのです。私にとっては堪え難い屈辱でした。リモコンにバカにされた。笑われた。あまりにもショックだったのでしょう、事件の前半は鮮明に覚えているのに、その発言の後の記憶はまったくありません。
それ以来リモコンは、なにかっつーと、このミカン発言を私の大事な人にチクるようになりました。まったく、なんであんなことを言ってしまったのでしょう。でも、どうしてもあのときは言ってやりたかった。ミカンを投げたら痛いんだぞ…。
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vol.4 番外編
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原文ver.
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ボツ原稿
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販売元: マガジンハウス
定価: 714円
販売価格: 714円
税区分: 外税
発売年月日: 2003/05/06
種類: 雑誌
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vol.4
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弟という字のフリガナが“リモコン”だった日(03.5.6発売6月号)
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